研究プロジェクトに関連する記事について
2025.03.26
ここでは、最近の研究活動や現在取り組んでいる主なプロジェクトについてご紹介します。
▼「オンライン学習による日本語初期指導カリキュラム開発・検証事業」
本研究は山口県立大学「研究創作活動助成(大地共創研究型)」の助成を受けたものです。研究課題名:「グローバル・多文化共生社会における教育課題解決を目指した官学地域連携による英語および日本語の初期指導カリキュラム開発・検証事業」研究期間:2022年度~2024年度(研究代表:林炫情)
本事業は、2022年4月より山口県教育庁義務教育課との共同研究で実施しているもので、インターネットを活用した遠隔支援システムによる日本語の支援体制の充実に向け、オンライン学習による日本語初期指導カリキュラム開発・検証のための基礎研究です。本事業の主な内容としては、(1)日本語指導を必要とする児童生徒のための日本語初期指導カリキュラムの開発と検証、(2)日本語教師養成の教育カリキュラムの開発と検証です。今後、日本語指導を必要とする児童生徒への支援の充実、そして日本語教師養成課程をカリキュラムの充実を図りながら、多文化共生社会の実現に向け地域人材の活用を図っていきたいと考えています。
2022年度取組活動報告書/ 2023年度取組活動報告書/ 2024年度取組活動報告書
▼「日本語教室空白地域である吉賀町の日本語教室立ち上げと立ち上げ後の自立と継続」
本研究は山口県立大学受託研究(島根県吉賀町)で実施したものです。研究期間:2024年度(研究代表:林炫情)
本プロジェクトは、島根県吉賀町役場からの依頼を受けて、2024年4月から2025年3月にかけて実施されました。地域住民と外国人住民の相互理解を深めることを目的に、山口県立大学(大学)と島根県吉賀町(行政)が連携し、1年間にわたりオンライン日本語教室「みんなでひゃころう!」を開設・運営しました。役割分担としては、吉賀町役場が外国人住民のニーズ調査、教室のスケジュール管理、オンライン授業の設定、授業実施者と学習者の連絡調整などを担当し、山口県立大学は教材の作成および授業の実施を担当しました。
▼「日本語学習者の迷惑場面における認知と言語行為:日中韓比較と日本人母語話者の評価」研究
本研究はJSPS科研費22K00642の助成を受けたものです。研究期間:2022年度~2025年度(研究代表:林炫情)
言語行為は潜在的な価値観、信念、文化的前提などを反映しています。ある種の行為が迷惑だと認知され、それが迷惑であると判断される基準としては、その社会・文化に共通した意識の総体としての「社会的合意」が判断の前提となります。しかしながら、ある社会文化では迷惑だと思われることでも、他の社会文化では受け入れられる場合もあります。したがって、社会的合意は個人の心理的な側面とともに、その個人が属する社会文化によっても異なる可能性があります。そのため、外国人が日本で生活するにあたり、迷惑と感じられる場面を認知し、注意を促したり、あるいは謝ったりする行動をどう起こすべきか、母国と日本の社会・文化の違いから、判断するのが難しいことが予想されます。
本研究の目的は、迷惑場面における認知と注意行為、そして注意に対する謝り行為に注目し、語用論的枠組みを用いて日本人・中国人・韓国人の特徴を明らかにする。また、第二言語習得語用論の観点から、中国語と韓国語を母語とする日本語学習者における語用論的転移の特徴と母語話者の評価に関する横断的調査を実施し実証的に究明することです。最終的には、これらを通して、日本語学習者の語用論的能力の育成を目指した日本語教育のシラバスやカリキュラム作成への提言および日本社会が目指す多文化共生に示唆を与えることを目指しています。